研究課題/領域番号 |
11620002
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
松村 良之 北海道大学, 大学院・法学研究科, 教授 (80091502)
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研究分担者 |
林田 清明 北海道大学, 大学院・法学研究科, 教授 (50145356)
長谷川 晃 北海道大学, 大学院・法学研究科, 教授 (90164813)
太田 勝造 東京大学, 大学院・法学政治学研究科, 教授 (40152136)
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キーワード | 矯正的正義 / 分配的正義 / 平等 / 効率性 / 組織 / 責任帰属 / 独占禁止法 / 組織体逸脱 |
研究概要 |
長谷川は次の諸点を明らかにした。社会における基本的ユニットに対する責任の帰属はしばしば矯正的正義の問題として考えられるが、より根元的にはユニットの活動結果として生じた違法な状態の内部化としての分配の正義の問題であると捉えることができる。このような角度から見るとき、焦点となる社会的ユニットが個人であれ組織であれ、あるいは個人と組織との関係であれ、それらの責任帰属の問題は、一定の公共的な価値規準をもとにした責任の分配の問題として捉えられることとなり、それ故また、このような形の問題設定が行える限り、個人と組織の責任バランスの問題は自由、平等あるいは効率性といった公共的な価値規準に基づく負担の分配の問題と同列に論じうることとなるのである。林田、太田は前年度までに作った分析モデルを実際に用いて実証的な分析を試みた。とくに民法・法人論や代理論などの取引面と企業自体や機関・代表者の責任・代位責任論を主要な対象として分析した。前者では組織の情報が一定程度開示されないと便宜主義的行動をとる場合、後者は個人責任と組織・団体の責任が交錯する場合を念頭において検討した。松村、太田は責任帰属が問題となる組織体逸脱の例として、独占禁止法違反を取り上げ、課徴金納付命令を受けた事業者を被験者として郵送調査を行った(サンプル数192、有効回答数71)。データの分析から、日本においては責任帰属は拡散的であり、個人に責任を帰属させることは好まれないこと、それゆえ、処罰された個人には非常に同情的であること、組織の大規模化・官僚化にともない個人責任が優越してくるということは見られないこと、しかし組織にとっての打撃などが大きいときには、特定の個人に責任を帰属させるという外部帰属の傾向が出現することが示唆された。そして、以上3つの研究が統合された。
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