1.「安楽死」の実態調査に関しては、約1000の緩和医療関係者に「安楽死」についての認識と選好に関するアンケート調査を行い、現在それに関するデーターの集計を終えた。近日中に、そのデータに基づいた論考を執筆する予定である。この調査は、研究実施計画でも述べたように、オランダ、オーストラリアで行われた調査と基本質問事項が同じであるため、3カ国の比較検討が期待できる。 概括的には、本調査から次のような特色が見られた。 回答者のうち45%の医師と28%の看護婦が、担当の患者から当該患者自身の命を直接的に終わらせる積極的処置を取るよう要請されたことがあり、6%の医師がその要求に応じたと回答した。その要求に応じた看護婦は0であった。回答医師の約5人にひとり、看護婦の6人にひとりが自発的積極的安楽死の合法化を支持し、ほぼ同数の医師と看護婦が、合法化されたならば、患者の希望に応じて自発的積極的安楽死を実行すると回答した。これらの数値をオーストラリアのそれらと比較すると、患者からの「死を早めてほしい」という要求はほぼ同じ頻度であるが、それに応じて積極的処置を取った医師や看護婦は、かなり少ないし、また自発的積極的安楽死の合法化に関しても、オーストラリアの医師や看護婦の約半数が賛成しているのに対し、本研究の回答者は5〜6名にひとりと少ない。 2.「安楽死」の正当化論についての批判的研究に関しては、なお先行研究についての整理、論点の絞り込み中であり、今後、上の調査結果の批判的検討と平行して、議論を深めていく予定である。
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