研究課題
基盤研究(C)
西欧近代法研究班における研究は次のように展開した。神寶秀夫は、絶対主義時代において、法形態の特質が法源の多様性と君主による秩序化にあったこと、君主立法の目的が身分制に基づいての全体化と個人化にあったことを明らかにした。従って、近世は固有性と近代への連続性とを有していた点を究明した。金山直樹は、近代法の本質的特徴はcivilの法であることであり、法は至るところで民法として普遍化・一般化を成し遂げ、人の全生活が細部に至るまで、まずもって民法によって規律されている点を論じた。広渡清吾は、法の歴史的分析において近代法がどのような位置付けをもって議論されてきたかを踏まえながら、ナチズムがドイツ社会の近代化に対してどのような位置にたつかをめぐる議論を検討し、また、ナチズムが近代法に対してどのように位置したかを分析し、近代化の両義的性格を明らかにしようと試みた。中国法研究班の寺田浩明は、清代民事司法が持つ調停的性格を、農業的静態的社会の対応物としてではなく、発展した市場的・契約的な社会関係に対する公権力の対処方汚の一つとして位置づけなおした。日本法研究班の神保文夫は、近代の民事裁判制度は江戸時代のそれとはまったく異なるものと考えられているが、大坂町奉行所における金銀出入の実務の中には、明治以降近代西欧法の受容を可能ならしめた基盤が既に形成されていたことを論じた。総じて、上記諸研究によって、西欧近代法概念は、前近代からの連続性に着目すること、その紀律化的側面に注目すること、そして独自の体系をもつアジアの法と比較することを通じて、大きく相対化されたといえる。
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