本年度は主として、地方自治体を相手に情報公開請求や住民監査請求を積極的に行っている「市民オンブズマン」の活動の実態把握に取り組んだ。 まず7月31日・8月1日の両日に横浜で開催された「市民オンブズマン全国大会」を傍聴し、活動報告を聞くとともに、同大会に参加していた全国各地の市民オンブズマン・グループのメンバー数名に個別に聞き取り調査を行った。そこでは、具体的な活動の実態についての情報を得るとともに、市民オンブズマン・グループには、大別するならば、弁護士が中心的役割を担っているものと、法の素人である一般市民が中心的役割を担っているものとの2つがあることを知ることができた。 そこで、弁護士中心の場合と一般市民中心の場合とで、市民オンブズマンの活動形態、とりわけ法制度の利用の仕方に、どのような相違があるのかを明らかにすることが必要であると考え、さしあたり、弁護士中心の市民オンブズマン・グループとして大阪と名古屋の市民オンブズマン・グループ、一般市民中心の市民オンブズマン・グループとして高知と徳島の市民オンブズマン・グループを、それぞれサンプルとして選び、計4つの市民オンブズマン・グループの代表者ないしは中心的メンバーを個別に訪問し、聞き取り調査を実施した。 また、こうした聞き取り調査に並行して、市民運動や社会の「法化」に関して論じた国内外の文献の収集にも努めた。 以上のように、本年度の研究は、理論的分析を行うための素材となる基礎資料の収集を目的としたものであり、聞き取り調査の記録を含む収集した資料の本格的な分析は、来年度以降の課題である。
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