(1)啓蒙期のジェンダー論については、以下の研究を発表した。まず、啓蒙期に情報が性別に分化したこと、すなわち、市民男性が読書協会に集って公論形成に参与するようになる一方で、識字層の女性は私的読書の担い手になることを検討し、(1)の論文として発表した。また、近代的性差論がすぐれて西洋的な価値観であり、近代以降の植民地主義とあいまって「西洋-非西洋」が「男性-女性」「優-劣」の対比で論じられはじめることについても検討した。この検討については(2)の報告をおこない、平成13年度末に論文として執筆予定である。 (1)「コミュニケーション過程としての啓蒙主義-18世紀末ドイツの読書協会」(前川和也編著「コミュニケーションの社会史」ミネルヴァ書房、2001年3月) (2)平成12年10月京都大学人文科学研究所「オリエンタリズムとジェンダー-啓蒙期西欧女性のハーレム見聞記をめぐって」 (2)立法に関しては、平成12年度はとくに家族法ならびに社会福祉法にあらわれる母子関係の研究に重点をおいて研究をおこなった。啓蒙期より顕著になる「母性論」は、19世紀前半に市民家族に受け入れられ、ドイツ民法典家族法編纂のさい、親子関係立法の基本的前提とされた。「性の二重基準」により男性の性的逸脱には寛容となったが、未婚の母は「母性」に欠ける存在として定式化されたのである。婚外子法の問題性については、民法典編纂期からすでにフェミニズムや児童福祉関係者から指摘があったが、ワイマール期には、第一次大戦の人口減による危機感から、政府が率先して婚外子保護にのりだすようになる。それは、19世紀的な「母性論」を労働者家族もまた受け入れていく過程と平行していた。以上のような研究の成果は、以下の2回の研究報告において発表した。平成13年度前半期に論文として執筆予定である。 (1)平成12年6月24日近代社会史研究会「ドイツにおける婚外子法の改正論議-ドイツ民法典編纂からワイマール期まで」 (2)平成13年1月20日女性史綜合研究会「ワイマール期における婚外子法改革論-母の権利と父の義務」
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