本研究は、国(連邦制の国にあっては、連邦と州)及び地方公共団体の会計検査制度をいくつかの主要国を取りあげて比較研究を行なったものである。研究成果報告においては、主として英国、アメリカ合衆国、ドイツ、フランス、カナダ及びオーストラリアを取りあげている。 第1部においては、「会計検査制度の諸潮流」をまとめている。国の会計検査機関の組織に関して、権力分立制度との関係において、いくつかの類型が認められること、合議制機関方式と独任制機関方式とがあること、外部監査機関のほかに内部監査機関を設けている国が多いことを指摘している。また「会計」の検査以外に持続可能な環境についての監査権限を付与されている国があること、告発者保護法の制定により、会計検査院も、その告発を受けとめる機関としての権限を与えられていることを指摘し、かつ、諸外国の会計検査機関自体が外部の監査を受けていることなどから、会計検査機関の「責任」が今後の重要な課題となることを導いている。さらに複数のレベルの政府の会計検査機関相互の間において検査(監査)そのものについての協力関係等があるほか、技術上の協力関係も重要となることを指摘している。 第2部においては、自治体の監査制度の比較研究を詳細に展開している。自治体監査を実施する機関を特別に国(州)に設けている国、国(州)の会計検査機関が実施する国、組合方式、会計士監査の義務づけによる場合などの多様な方式がみられる。これらの研究成果は、今後の日本における自治体監査制度の構築に資するものと考える。なお、日本の外部監査制度に関して実態調査を実施したが、創設直後であることもあり、とりまとめの研究は今後の課題として残すこととなった。
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