(1)まず、基礎的な作業として、近年の権利論に関する整理を行った。まだ考察の途上であるが、一応のまとめとして論文「立憲主義・「制度」・自由市場-権利論再考のための覚書-」を公表する予定である。また、訴訟制度との関連での検討として「行政訴訟における取消訴訟の訴訟物」を公表したほか、関西行政法研究会および北陸公法判例研究会において「情報公開訴訟の訴訟物」と題する報告を行なった。これらの報告については次年度に論文化する予定である。 (2)次に、権利と行政手続法制に関する研究を進めるための基礎作業として、ドイツの社会法典第10編(行政手続)の翻訳作業を行った。次年度中に、行政手続、社会データの保護、保険担当機関との協力、第三者との関係、の各章を順次公表していきたい。 (3)生活保護事件に関する行政手続および裁判手続き上の権利保護については、資料収集のほか、ドイツでの実情について、ハンブルク高等行政裁判所を訪問し、U・メッケンハイム長官からレクチャーを受けることができた。上記の社会法典第10編(行政手続)の現状に関する検討ともあわせて、次年度に論文化を行うこととしたい。 (4)行政手続・裁判法制と権利論(とくに社会権)とのつながり、および、社会保障分野での個人情報の保護(データ保護)に関する検討については、今年度に着手することができなかった。また、介護保険制度の施行にともなう手続的権利の保護制度の調査・検討についても未着手である。いずれも次年度の課題としたい。
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