(1)国および地方自治体は、社会保障領域において私法上の契約という手段を用いる場合、その責任を十全に果たすためには、十分なサービス供給の確保、サービスの質の監視およびサービス利用抑制要因の除去、サービスに関する十分な情報提供・サービス利用者の交渉・取引能力の対等化という市場成立に必要な4要素を保証する仕組みとともに、社会保障領域の法関係の特質を考慮した契約手続規定を導入しなければならない。 (2)日本においても社会保障行政手続が整備されねばならない。規定されるべき内容は、信頼保護の原則、詳細な処分理由の開示、事実関係の調査、事実認定、救済手続の教示および処分情報の提供に関する行政機関の義務、違法な行政処分の是正手続(特に、行政機関側に責がある場合の過剰給付の是正手続)、およびこれらの手続の利用を援助する仕組みである。 (3)司法改革に関する検討結果は次の通りである。(1)社会保障争訟制度の改革が必要であることは明白であるにもかかわらず、現状では改革の検討対象とはされていない、(2)司法制度改革に際しては社会保障事件の諸特質が考慮されなければならない、(3)行政訴訟制度改革に際しては、モデル訴訟制度および、広範囲の事項について効力を及ぼす既判力制度(継続効を有する行政処分に対応する既判力の制度)を導入することが有意義である。
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