1.本研究は、国際社会において初めての画期的な国際刑事裁判所の設立の過程や特徴を検討し、とくにローマ規程に定められた重大な犯罪(ジェノサイド罪、人道に対する罪、戦争犯罪、侵略の罪)について研究することにより、国際刑事裁判所の意義を明らかにすることを目的としている。そのために、関連資料文献を収集整理し、また国内外の調査旅行により研究のための関連資料・情報を入手した。 2.国際刑事裁判所の構想については、第一次大戦以後の諸提案、第二次世界大戦後の2つの国際軍事裁判、国連安全保障理事会によるアドホックな旧ユーゴ国際裁判所やルワンダ国際裁判所の設置を経て、ローマ外交会議で裁判所規程が採択される過程とその意義について研究し公表した。ローマ規程の署名と批准をめぐる問題点を米国とフランスの態度を中心に検討した。 3.国際刑事裁判所が管轄権を有する重大な国際犯罪のうち、まだ定義のない侵略の罪について、ニュルンベルク国際軍事裁判所で取り扱われた「平和に対する罪」の構成要件の検討などを通じて、この概念の形成過程の研究に着手し、一部は成果を公表した。 4.重大な戦争犯罪の中でも、捕虜の取扱をめぐるものについて、歴史的に捕虜の地位の変化などを解明し、とくに第二次世界大戦および極東国際軍事裁判で示された捕虜問題について検討を加えた。戦争犯罪と人道に対する罪は、現代の地域紛争で再び注目されており、これらを取り扱った旧ユーゴ国際裁判所の最初のタジッチ事件の検討を行い、その問題性を指摘した。
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