平成11年度の研究においては、主としてサイバースペースで起きる様々なトラブルについて利用者アンケートや実例調査を実施して、ADR(裁判外紛争処理)の様々な分野における有用性と限界を検討し、整理した。具体的には、アメリカにおけるOn line Ombuds Officeの調停サービスとインターネット・ドメインネームと商標権等との紛争を対象とするICANNのADRである。 平成12年度には、爆発的に事例が蓄積されているドメインネーム紛争のICANNによるADRの事例研究を進めるとともに、日本のドメインネームを対象とした同様のADRのルール策定過程から検討に参加し、また日本工業所有権仲裁センターの下でドメインネームADR手続について引き続き検討を加えている。他方、ドメインネーム以外のサイバースペース紛争についてADRの事例研究も進めた。On line Ombuds以外にも多数の紛争処理機関が立ち上げられており、それらの比較検討は現在進行中である。 研究の最終段階に、我が国でサイバースペースにおけるADRを構築する場合に考慮すべき点として、調停型と仲裁型との得失、約款による合意調達の可能性、係争額に見合った手数料が低額に抑えられ、コストの負担は紛争解決により利益を得られる者が負担すべきこと、ネットワークを利用することによる手続上のメリットとその限界、オンラインのみで紛争処理を媒介することの適否、オンラインの特性を活かした手続構成と手続的公正さの保障との兼ね合いなどについて、検討を進めているところである。
|