本研究の第二段階として、今年度においては、著作権法分野におけるEUの活動のうち、情報社会における著作権指令草案ならびに電子商取引指令草案について研究を行い、あわせて、EUの主要構成国であるドイツ著作権法の契約に関する規定についても研究を進めた。具体的には、EU法関連図書、知的財産法関連図書としてEU指令、域内の著作権制度についての文献を収集し、分析を行った。この研究の結果明らかとなった点としては、以下の通りである。1.著作権と並行輸入について、EUは域内消尽理論を採用している。この点、国際的消尽を採用した日本法とは異なっている。2.インターネットサービスプロバイダーの責任免除について、アメリカ法とは異なり、ノーティスアンドテイクダウン制度の導入が見送られた。3.コピープロテクト回避規制の導入に伴い、ドイツでは著作権法上の権利制限規定との関係が議論されている。焦点は、コピープロテクトの掛けられたコンテンツを著作権法上正当とされている目的で利用することは違法となるか、という点である。この点につき、ドイツの裁判所は、これまでのところ、コピープロテクト保護を優先するという結論を採っている。これに対して日本法においては、このような問題の所在自体があまり意識されておらず、ドイツでの議論をさらに分析する必要性が明らかとなった。
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