平成13年度 第三段階として、今年度は、EU知的財産法のうち、第一に、著作権管理事業の法的規制のあり方について検討を行い、成果を論文の形で公表した。具体的には、EUにおける私的録音補償金制度のハーモナイズの動向を調査し、わが国における法制と比較した。研究によって明らかとなった点としては、EUにおける議論の焦点が、課金対象としてPCを含めるか、という点に移っていることが挙げられる。なおこの点は、早晩わが国においても問題となりうることが予想される。第二に、インターネット上での著作物の使用についての準拠法、国際裁判管轄について考察した。具体的には、従来知的財産法学上多義的に用いられ若干の混乱がみられた基本概念である「属地主義」につき、国際法学における通常の用法に照らして検討を加え、成果を論文の形で公表した。公法分野で用いられる属地主義の語を軽々に私法である知的財産法に適用することを諌めた。第三に、EU電子商取引指令を素材として、プロバイダ責任の制限について考察を加えた。成果は、論文の形で近く公刊される予定である。検討によって明らかとなった点としては、EU指令が水平的アプローチを採用したが、著作権分野への適用についてはなお相当の議論が続いていることである。第四に、著作権の基本概念である創作性、とりわけ機能的性格の強い作品についてのそれについてドイツ法を参考として検討を加え、成果を国内学会において報告した。論文の形でも近日公刊される。
|