(1)地球温暖化対策のうち産業セクター対策は、規制的手法が適用できない領域ではないが、因果関係が十分に明確にされていないか、規制による利益を受ける者(被害を受けるおそれのある者)が環境政策に影響力をもつステイクホルダーとして存在していないか、あるいは、規制的手法が他の手法と比べて最も効率的と評価されないような場合には、その導入は事実上困難である。 (2)わが国の温室効果ガス総排出量は、1999年度において90年度比約6.8%増加、二酸化炭素(CO2)は約8.9%増加している。CO2排出量の約42%を占める産業セクターが現在実施しているのは、非規制的手法の一つとしての自主的取り組みであり(経団連環境自主行動計画、2010年におけるCO2排出量を1990年度レベルに抑制)、第3回フォローアップ結果では、99年度におけるCO2排出量は、98年度比2.9%増加、90年度比0.1%減となっている。この手法には、参加者の自主性を尊重するこの仕組み自体から生ずる限界が、目標、カバー率、履行確保のための仕組み、透明性・信頼性の欠如という点にあらわれている。 (3)協定的手法は、そのような限界を超えることができる。わが国では、1970年代から、自治体が公害防止協定を用いて公害・環境対策を進めてきており、現在でも、1999年4月から2000年3月までに約755件の協定が結ばれた。柏市の例でみると、98年度から、同市と環境保全協定を結んだ事業者数は、96法人(製造業75法人、商業・サービス業21法人)あり、グリーン商品の利用、低公害車導入、省資源対策、温暖化対策などが取り組まれている。イギリスやドイツでは、協定的手法が用いられている。 (4)協定締結のためのインセンティブとして、環境関連税や総量規制などの導入と組み合わせる必要がある。また、制度運用の効率性のために、個別事業者だけでなく、法人化(中間法人法)した、または法人格なき社団としての事業者団体が協定の当事者の一方に加わる必要がある。
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