1.本研究は、地球温暖化防止関連法制を中心に、非規制的な法的手法の評価を行うことを目的としているが、とくに(1)自主的取組と(2)協定的手法の評価を行う。 2.わが国の産業からのCO_2の排出量は全体のおおよそ40%を占めるところ、産業界(経団連及び個別企業)が実施している自主的取組は政府の「地球温暖化対策推進大綱」の重要な一部をなし、改訂された新大綱においても対策の重要部分を占めている。 3.対策手法の評価視点としては、a.最終的目標に対して当該手法が占める比重の評価(参加者×現実的目標/最終的目標)、b.当該目標達成のための進行管理の評価(透明性、第三者評価)、c.履行確保措置などが考えられる。 4.わが国で現実に用いられている自主的取組は、a.の視点では肯定的評価が与えられるが、b.については、達成度の評価をする透明性に欠け、さらに目標達成のための進行管理の手法が明らかでなく、さらにc.については、履行確保措置が主体の自主的対応にまかされているという問題がある。 5.協定的手法は、自治体レベルの公害防止対策に用いられてきた手法であり、EU諸国では環境協定という形で広がっている。この手法の評価としては、a.は、参加者を確保するための誘導的手法の有無とその評価、b.は参加企業の措置と実績に対する情報を収集する手段、中間的に目標達成が困難な場合の目標達成に向けて実施手段の改良可能性とその評価、c.については、制裁措置と強制履行の可能性の評価にかかっている。 6.結論として、自主行動計画の手法は、京都議定書の数値目標の達成という観点からは不十分であり、協定的手法への移行を検討する必要がある。協定的手法が機能するかどうかは、協定締結のインセンテイブをどう構築するかにある。
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