本研究は、株式会社の法制度のなかでも、株式会社企業の運営のあり方に直接に関わる業務執行機構の変遷を、フランス法を素材にして、実証的に明らかにすることを目的とした。 株式会社(societe anonyme)に関するフランスの法規定は、1807年の商法典(Code de commerce)においてはじめて定められた。ただし、そこでは、株式会社の業務執行機構に関しては、取締役(administrateur)による株式会社の管理が定められていたにすぎなかった。1867年に株式会社の設立準則主義が確立した際に、株式会社の組織が法定さており、その後、1940年から1943年にかけての法改正によって、株式会社の会社機関として取締役会(conseil d'admiministration)が明文をもって定められている。 さらに、1966年の商事会社法全面改正の際に、株式会社の業務執行機構として、それまでの取締役会(conseil d'admiministration)からなるいわゆる一層制の機関構成に加えて、新たに、執行役会(directoire)と監査役会(conseil de surveillance)とからなる二層制の機関構成が定められており、株式会社はその定款においていずれの機関構成によるのかを定めるものとされている。 その後、1990年代に始まったコーポレート・ガヴァナンス論の影響を受けて、2001年の改正では、一層制の機関構成においても、取締役会の会長(president)と業務執行者(directeur general)を分離させる可能性が認められている。 本研究は、以上のような株式会社の機関構成の変遷を明らかにし、そのうえで、現行のフランス株式会社法による業務執行機構の内容を確認した。あわせて、フランスの主要企業40社の年次報告書の検討を通して、それらの企業の業務執行体制の具体的な内容も明らかにした。
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