不当労働行為制度については、現在多くの問題に直面している。申立件数が減少していること、実質は個人的事件である駆込み訴えの事例が増加していること、等である。労働組合に関連した団結権だけを保護するシステムが十分な機能をしなくなったといえる。では、職場において労使紛争や労働問題が自体がなくなったのであろうか。本研究は、このような問題関心から、必ずしも労働組合の活動に直結しない集団志向的な行為をどう評価すべきかを考察したものである。労働委員会や各地のコミュニティユニオンにおけるヒヤリングの結果は、駆込み訴え事例は増加しているが、長期的に労働組合員になるわけではないことが明かになった。もっとも、労働組合以外にNPO等結成の動きもみられる。また、二重組合所属の問題もあった。 裁判例および労働委員会においては、このような問題関心自体がみられない。労働組合を媒介にしない集団志向的行為をことさら保護しようとする発想に欠ける。学説においても同様である、やや注目されるのは労基法等の「従業員代表制」や「労使委員会」における代表委員の行為を保護すべきであるという関心がみられることである。とはいえ、これらの制度において使用者に対抗しうるパワーを保持しうるかは疑問である。今後の展望として、労組法7条1号にいう「組合の結成」概念を拡張すること、憲法28条の「団結権」概念を見なおすことが考えられる。また、NPOや他の市民団体についてもそれが組合的役割を果たす限り一定の保護をすることも考えられる。
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