本研究で明らかになったことは以下のとおりである。現在、より本格的な論文を構想中である。 1)現行不当労働行為制度は、あくまで労働組合と関連づけて団結権を構想している。労働委員会実務の立場もそうである。したがって、組合員以外の集団志向的行為を保護するという問題関心はない。実際にそのような紛争もみられない。 2)個別労働者の集団志向的行為に対しては、企業別組合ではなく地域のコミュニティユニオンに加入することによって一定の対応が可能である。実際にも駈込み訴えの事例が増加している。しかし、法的・制度的にはやはり「労働組合」と関連付けられている。 3)労働組合とまったく関連のない企業内の集団志向的行為として現在考えられるのは、(1)従業員代表(過半数組合でない場合)による諸活動、(2)一般的な労働条件についての苦情・相談が考えられる。いずれの場合も、当該行為を特別に保護すべきである、もしくは特別に規制すべきであるという発想はない。そのような裁判例もみうけられない。 4)今後、注目すべきはむしろ市民的なレベルにおける労働者集団の活動である。たとえば、労働者支援のNPO等が考えられる。アメリカにおいてこのような動きは顕著であるがわが国では萌芽的な状況である。
|