本研究「雇用の多様化・流動化と市場における公正の確保-新たな法規範と紛争処理システムの模索-」は、今後さらに進展が予想される雇用の多様化・流動化など雇用システムの変化に対応して、雇用システムをささえる雇用保障に関する法規範、および労働条件の調整問題を規律する法規範について比較法的視点から考察を加えるとともに、その法規範の適用場面である紛争処理システム、とりわけ雇用の多様化・流動化によって重要性を増す労使紛争処理システムについて検討し、21世紀のあるべき雇用システム構築に向けて、いくつかの具体的な提言を行うものである。 具体的には、「はじめに」で本研究の全体像を素描した後、第一章でアメリカ、ドイツ、日本の雇用システムの現状と変化について分析し、それぞれの雇用システムが外部労働市場機能をどのように取り入れ、あるいは、コンロトールしているのかを明らかにする。第二章では、雇用システムに内的柔軟性をもたらす労働条件の調整・変更問題について、労働市場に委ねた処理と、紛争処理機関を利用した処理があり得、それらをどのように雇用システムに取り入れるかという課題を提示する。そして、解雇の規制に対応して、効率的に機能する紛争処理機関の存在の重要性を指摘する。第三章では、雇用の多様化・流動化によって重要性を増す労使紛争処理システムについて、裁判所や行政機関による紛争処理の現状を概観し、裁判所が今後果たすべき役割を分析し、さらに、司法改革制度の動きにも対応して、労働事件について労使参与委員の制度を導入すること等を提言する。第四章では、こうした紛争処理システム再編の問題を個別企業における紛争処理機能の低下と企業外における紛争処理の必要の増大という視点から、比較法的議論に載せるべく英文で敷桁する。「さいごに」で、全体のまとめを行う。
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