ここ1、2年遺伝子治療は急速に発展し、医療技術として確立しつつあるとの実感を持つに至った。私も、北海道大学医学部をはじめ、幾つかの医療機関を訪れ、そのことを確信した。同時に、遺伝子治療にともなう法律問題も噴出し、早急に解決すべき論点も多くなっている。 本研究は、夏にヨーロッパ各国における遺伝子治療の実態を調査するとともに、訪問先の担当医師にインタビューし、先端技術の医学適用にともなう問題点を尋ねた。また、わが国で遺伝子治療を実際に行っている医療機関の担当者から多くの教示を受けた。 本研究は、これらの実態調査を踏まえ、比較法的・法理論的観点から、遺伝子治療における医事法の課題を検討してきた。その成果は研究発表論文として具体化しつつあるが、問題は、法的解決策の提示以前に医療現場が急速に変化している事実である。特に最近では、クローン人間の出現の可能性をはじめ、遺伝子治療をこえたES細胞の研究などが世間の注目を浴びている。平成12年度はこれをさらに進め、法政策的観点から立法論を視野に入れ、総合的観点から考察を進めたい。
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