「国際刑事裁判所規程」の問題を刑事法学の視点から見た場合、主要なテーマは、(1)国際刑事裁判所において訴追される対象犯罪、(2)それに対して科される刑罰とその執行、(3)国際刑事裁判所の管轄権、(4)刑法総則規定、(5)国際刑事裁判所における刑事手続、(6)国際刑事裁判所に対する締約国の司法上の協力(犯罪人引渡し、捜査共助)等である。 平成11年度と12年度には国際連合において、国際刑事裁判所規程を補充するものとして、対象犯罪についてのガイドラインと手続・証拠規則の制定のための国際会議が開催された。この会合に日本政府代表団法律顧問として出席し各国代表と意見交換を行い、その成果等を基に同規程の解釈論的研究の深化に努めた。その成果がTrifftererザルツブルク大学教授(オーストリア)等による、国際刑事裁判所設立に関与した主な研究者と実務家のほとんどが執筆した「国際刑事裁判所規程」注釈書の執筆への参加である。 また国際刑事裁判所規程の解釈には、これと関係の深い、旧ユーゴ国際刑事裁判所規程との比較法的研究が必要である。そのため同裁判所(ハーグ)を訪問し、検察官等の関係者と意見交換を行った。 国際刑事裁判所の管轄権の問題は、「普遍的管轄権」の問題と関連する。これをテーマとするプリンストン大学における国際会議に出席し、討議を行うと共に、採択された文書の起草に参加した。 また、外務省主催の「国際人道法に関するセミナー」の「第4テーマ:人道法の履行確保と違反行為の処罰」の座長を務めた。
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