近時、犯罪のグローバル化が進むにつれ、国内では違法であるが、国外では適法な行為を国外で行うケースが増えている。そのなかには、単独犯の場合もあれば、共犯の場合もある。このうち、とくに問題となるのが共犯の場合である。そこで、本年度はこの問題を中心に検討した。 すなわち、本年度は、まず、刑法の適用をめぐる従来の議論を明らかにするために、刑法適用の諸原則や刑法の適用に関する内外の学説、判例などを収集し、分析したうえで、これをコンピュータに入れてデータベース化した。また、いくつかの研究会に出席し、意見の交換などを行い有益な知見をうると同時に、本研究テーマの周辺分野についても貴重な知見をうることも出来た。 これらの研究を通して、本年度は、刑法の適用に関する法的性格に関して通説である処罰条件説と、犯罪の判断基準に関する通説である偏在説によれば、海外で適法な行為を国内で教唆、幇助したときには、それらの行為が国内で違法であるかぎり、つねに共犯が成立するという不都合な結論になること、そして、これを回避するためにさまざまな解釈論上の試みがなされているが、それは必ずしも成功していないこと、問題解決へのアプローチは政策的な観点から行うべきであること、さまざまな領域でグローバル化が行われてことを念頭におくならば、憲法上の原則である国際協調主義の視点が重要であること、そのためには相手国の法的状況を考慮して国内法における犯罪の成否を論ずることが必要であること、刑法の適用についてもいわゆる双方可罰主義に基づいた処理が必要であることなどの点を明らかにすることができた。 なお、本年度の研究成果については機会をえたので、その一部を公表した。
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