本研究の目的は、最近のようにグローバル化が進むにつれ、国内では違法であるが、国外では適法な行為を国外で行うケースに対して、刑法を適用する際における解釈論上の問題点を検討することにある。 そして、昨年度に引き続き、本年度も刑法適用の諸原則や刑法の適用に関する内外の学説、判例などを収集し、分析したうえで、これをデータベース化した。また、いくつかの研究会に出席し、意見の交換などを行い有益な知見をうると同時に、本研究テーマの周辺分野についても貴重な知見をうることもできた。 本年度は、昨年度の研究を踏まえて、ドイツ刑法との比較を中心に研究を進めた。その結果、ドイツ刑法は、犯罪の判断基準について徹底した遍在説を採用しているが、この点をめぐっては海外で適法な行為を国内で教唆、幇助したときには、それらの行為が国内で違法であるかぎり、つねに共犯が成立するという不都合な結論になることなどの問題点も指摘されていること、これを回避するためにさまざまな解釈論上の試みがなされていることなどを明らかにすることができた。その結果、わが国の刑法の国外的適用の問題を考える上で、貴重な示唆を与えてくれた。なかでも国際協調主義の観点から、刑法の適用を抑制すべきである旨の見解も指摘されている。それは、昨年度の研究の方向性と基本的に一致するものであることを確認しえたことは、きわめて有意義であった。 なお、本年度の研究成果についても機会をえたので、その一部を公表した。
|