研究概要 |
1.議員立法の活性化の分析を進めるため,当初の計画では1992年の第125国会以降現在までの衆議院議員提出法律案(衆法)について,提出者の所属会派,各院における付託日,委員会議決,会派ごとの賛否の情報,本会議議決,修正・否決の場合の回付,衆議院再議決,法案成立の場合の公布日などの分析用データファイルの作成をめざしたが,予定よりも順調に進み,昨年度に作成済みの第1〜第31国会のデータと合わせて,現在までのすべての衆法データを完成させた. 2.近年の議員立法の活性化と対照をなす1950年代以降の議員立法の衰退に関して,数量分析で特質を分析し,議員立法発議要件過重化に至る国会法改正過程を検討し,政治アクターたちにとって国会法改正がどのような意味をもったかを分析した.議員立法の衰退の原因は,国会法改正よりもその後に別に形成された制度ルールが重要だったことがわかった. 3.1994年の政治資金規正法改正により透明度の高まった政治資金全国調査データを利用して,政治資金支出と選挙競争の関連性に関する初の包括的研究を行った.分析の結果,候補者の選挙運動費用支出をもっとも強く規定するのは法定選挙運動費用であり,選挙運動規制が選挙運動および選挙運動費用のあり方を決定するというよく知られた事実が確認された.他方で,候補得票率の分析において,選挙運動費用,小選挙区支部支出,資金管理団体支出が得票率に対して影響力をもつことが明らかとなった.また,実際に得票率を変化させる効果は,選挙運動費用と資金管理団体支出はほぼ同じか後者の方が大きかった.このことから,結局,政治と金の問題は,政治資金の効果はあるがそれほど大きくないことから引き起こされており,政治に金がかかるという政治家の嘆きは,巨額の資金に見合う効果がわずかしかないということだったと考えられるのである.
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