本研究では、1980年代後半以降の「経済のグロバル化」の中核をなす現象である資本移動の増大に焦点をあて、資本移動の管理について以下の三つの点を検討することを目的とした。(1)第二次世界大戦後、資本移動の自由化についての各国の認識がどのように変化したのかを検討する。(2)国家による資本市場の管理の方策として資本移動規制が行われた事例を、ブレトン・ウッズ体制期と70年代以降について考察する。(3)資本市場の管理における国際レジムの変容について、特に80年代以降について考察する。 本研究は、(1)については、特にブレトン・ウッズ体制期においては、貿易の自由化が多くの国によって原則として承認されたのとは対照的に、資本移動の自由化についての合意は先進国間において成立しておらず、資本自由化の例として従来指摘されてきたOECDの「資本自由化コード」においても緩やかな方向性しか合意されなかったという点、(2)については、多くの国において資本移動規制は国内の経済政策の手段として用いられており、1909年代後半のアメリカでの資本移動規制政策が、国際的に見れば資本移動の自由化を促進したという点、(3)については、BISにおける銀行規制のバーゼル合意やIMFの役割に焦点をあてて資本移動の管理がどのような政治過程を経て行われたのかを検討し、国際レジームの態様がレジーム形成に影響を及ぼしているという点、を明らかにすることに貢献した。
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