1.本年度は、ヨーロッパ冷戦史のヨーロッパ側の研究状況を把握することに努めた。 2.まず資料の公開状況がアメリカと異なっており、いまだアメリカでなされているような体系的な研究は数多く見当たらないことを指摘することができる。それは当該分野に従事する研究者の数がアメリカと比較して少ないことなどにも由来するが、史料の整理・管理が拡散しており、様々な文書館を使用することがかなり困難になっていることにもよると思われる。 3.ついで、冷戦と関連するものとしてEUの歴史が存在し、冷戦の進展とEUの進展との関係づけが大きな関心を呼んでおり、ヨーロッパ側の研究者は冷戦史よりもEUの歴史により多くの関心を抱いていることを指摘できる。同様な問題はNATOに関しても指摘できるところであり、特に軍事面ではNATO史という観点からの研究の方が関心を集めている。 4.さらにイギリス、フランス、ドイツ(西ドイツ)などの多国間関係が問題になるが、進展をみせているのは独仏関係のみであり、英仏、独仏などの関係に関する研究は遅れている。 5.以上を踏まえ、次年度は米ソ冷戦史のなかでヨーロッパ側が主体として登場しえたテーマ領域(東方外交、CSCE、EUの進展、80年代の欧米、欧ソ関係)を中心にフォローすることにしたい。
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