研究成果の要点は以下の通りである。本研究によって、研究代表者の高橋は、まず『歴史としてのドイツ統一』という単著をまとめることができた。またその関連で、英文論文を完成することができた。また共同研究者である中山は、フランス政治史に関する2本の概説的論文と1つの仏文論文を完成した。しかしながら、「ヨーロッパ冷戦史再考」というテーマをヨーロッパからみてみると、研究成果報告書に記載したように、冷戦研究をめぐるアメリカとヨーロッパとの顕著な違いであり、極端な表現を用いれば、アメリカでは冷戦史研究であるが、ヨーロッパではあくまで戦後史研究であるという違いである。この違いが、単なる学問的伝統の違いなのか、それとも冷戦時代におけるアメリカとヨーロッパとの関係を反映したものであるのかが、今後の1つのテーマとなるという確信をもつに至った。この意味で冷戦史研究もアメリカ、ヨーロッパなど各地域の独自性を反映したものであり、日本の冷戦史あるいは戦後史研究を考える上で大きなショックであった。換言すれば、外交史研究の国際的普遍性と各国民国家的独自性の問題であり、アメリカの各分野での研究のもつ過度な普遍性への日本での傾斜への警告を示すものとして、興味のあるテーマであった。この意味で、ヨーロッパ側からの視点を加味すれば、(1)冷戦史を現代史のなかでどのように位置付けるのか、(2)冷戦後の時代を日本の独自の観点からどのように解明するのか、を痛感させられたテーマであったといえる。
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