本研究では、日本における政治的レトリック、政治的なメッセージの内容や特徴、演説におけるシンボルやメタファー、これらにおいて言葉がいかに大衆の情感に訴えるように使われているかを明らかにし、分析を行い、同時に欧米諸国との国際比較を行って類似点や相違点を比較できるようにする。 本年度は日本の政治家の言葉遣いの特徴をつかむため、これまで全国紙や週刊誌、専門紙などのマスコミを材料として、政治家のインタビュー記事や演説(首相の所信表明演説)などの内容分析を行った。そこで頻繁に用いられる言葉やシンボル、メタファーなどを検索し、その役割について考察を加えた。さらにマスコミの記事に出てくる言葉、レトリックなどにも同様の分析、考察を加え、政治的な「現実」がどのように構築されているかを総合的に検証している。 加えて政治家(特に国会議員)や秘書に対し、頻繁に個人的なインタビューを行った。この中で、彼らが有権者や同僚議員、官僚、記者など相手によってどのように言葉を使い分けるか、またメッセージの中でシンボル、メタファーがどのように使われているかを調べている。 これらの調査をもとに、平成11年には国際政治心理学会、およびイギリスでの研究集会で研究発表を行った。そこで海外の比較言語を専門とする研究者と意見を交換したり、データの比較などを積極的に行っている。来年度もさらにデータを増やし、国際学会で意見交換、集めたデータに対するフィードバックを受け、現代社会における政治レトリックの特徴と役割について国際比較研究の本を編集し、政治言語についての一般理論を構築したい。
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