1.初年度に準備を開始したサンプル・サーヴェイを、2000年6月の衆院選時に完了した。サーヴェイはこれまでに実施してきたものと同様、郵送法により、調査対象者は東京都の有権者1500人、有効回答数は601名である。分析の結果を92年、95年、96年、98年の調査結果と比べると、そこには興味深い傾向が認められた。すなわち、自民党に対する投票を経済状況の認識に関する6つの変数で予測した場合、2000年調査の結果は98年調査の結果と全く同じく、景気の現状に関する認識、今後の景気の見通しに関する認識、現在の暮らし向きに関する認識の3変数のみが有意な影響を示しており98年調査で見られた「現職指向(incumbency-oriented)」かつ「社会指向(sociotropic)」の経済投票の優位という傾向の継続が認められた。こうした結果は、日本における経済投票が「自民-党優位期」、「自社さ連立期」、「自民回復期」のそれぞれにおいて異なるメカニズム(有権者の意思決定の論理)によるものであることを改めて明らかにすると同時に、今後の日本において欧米諸国と同様な経済的業績投票が定着する可能比を示唆するものである。 2.また2000年調査では、社会的交換やいわゆる「パーソナル・ヴォート」、さらには政策的なイデオロギーと経済投票との関連を明らかにすることも試みられた。この目的のために3つのグループの質問項目が新たに用いられた。これらの質問項目に関しては現在分析を進めている最中である。
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