80年代のメキシコは、革命後それまで続いてきた民族主義的経済戦略と権威主義的・コーポラティズム的な政治支配システムがネオリベラリズムの展開と市民社会や新しい社会運動の出現を契機にして共に根本的な挑戦を受けた。その意味で、この時期はメキシコ現代史の一つの段階の終わりを画す歴史的転換期であった。その政治的表現形態は、官僚機構内部の変化、野党の強化と政党構造の再編、政治文化の変容、公共空間および市民社会を支え、民主化を求める諸杜会運動の政治舞台への登場や活性化などに見られた。サリーナス政権は、これらの挑戦と課題に直面して伝統的な国家-社会関係の再構築を企てた。平成12年度の主要研究実績、「グローバリゼーションとメキシコ権力構造の再編」(『政策科学』8巻3号)に続き、本年度は「メキシコにおける公共空間の創出と新しい社会運動-1985〜1995年を中心にして-」(『立命館大学人文科学研究所紀要』No.77)および「メキシコにおけるネオリベラリズムと市民社会の交差-全国連帯計画(PRONASOL)をめぐって-」(『立命館国際研究』14巻2号)を公表した。 これらの論文は、本研究課題全体の基本的かつ前提となる構成部分をなしている。政党構造の再編成過程については、「サリーナス期における選挙過程と政党再編」として本年3月末締切の『立命館国際研究』に発表する。また、地域社会構造の変容と政党再編に関しては、「ヘゲモニー政党の衰退と野党の可能性:メキシコシティー、ミチョアカン、モンテレイの事例」(仮題)として6月までに発表する予定である。なお、以上の諸成果をさらに拡大して近い内に単行本として出版するつもりである。
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