研究概要 |
本年度の研究をつうじて得られた成果は次のとおりである。 1 理論研究においては、福祉国家発展の規定要因をめぐる権力資源論から新制度論への展開および福祉国家の比較におけるジェンダー的視点の意義などについて国内外の文献を収集するとともにそれらを検討する中で、従来の比較研究の中で逸脱的タイプ、ハイブリッドタイプとしてとらえられがちであった日本の福祉国家の類型的な特徴が、企業と家族および各種中間共同体の連関を問うことによってより明確になり、1980年代以降の日本における「福祉多元主義」ヘの道の比較のなかでの特質もよりあきらかになってきた。 2 実証研究においては、一般に福祉先進国(=社会民主主義型福祉国家)とされてきた北欧特にスウェーデン、デンマークなどにおける福祉国家再編、そして社会民主主義政権の復活がみられる西欧とりわけブレア政権下の「第3の道」における福祉改革がいずれも「効率化」「市場化「普遍化」「多元化」を特徴とする「福祉多元主義」の道を歩みながらも公私ミックスの具体的な有りように分岐がみられることがあきらかになってきた。 3 戦後日本における社会保障,社会福祉の動向を外観しながら、1980年代中頃以降の日本における福祉改革の動向を法・政策面及び企業福祉や家族・地域福祉などの実態面において調査・研究し、その流れが「日本型福祉社会構想の破綻から日本型福祉多元主義の模索へ」として基本的におさえられることがあきらかになった。この研究と関連して、龍谷大学社会科学研究所30周年記念シンポジウム(テーマ「転換期における国家・市場・環境ー社会システムの変容と社会科学の課題ー」)のパネラーとして「グローバル化と日本における市民社会の可能性」という報告を行った。
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