本年度の研究をつうじて得られた成果は次のとおりである。 第一に、理論研究においては引き続き政治学と経済学の新制度論、比較制度分析あるいは比較福祉国家論の最新の研究動向をフォローすることに努めるとともに、そのことと併せて先進国の福祉国家の現段階つまり福祉多元主義の相互比較が可能となる理論枠組をあり方を検討した。 第二に、日本における福祉多元主義の動向を、分析的視点としては日本では福祉における「効率化」「分権化」「普遍化」「多様化」がどのように交錯しながら展開しているのかに注目して、分析を進めた。 第三に、2000年9月に10日間、スウェーデンを訪れ、セーデルテルン大学、ヴェクショー大学の福祉政策及び労働経済の研究者と意見交換をするとともに、研究のレビューを受けた。スウェーデンにおけるポスト福祉国家の現局面について理解を深めることができた。同時にスウェーデンでは1990年代初頭の頃経済的苦境に直面する中で、福祉サービス供給において協同組合を中心とするNPOの台頭が見られたが、90年代後半に入って経済面で回復が見られる中で福祉多元主義化の傾向が鈍化するという新たな傾向が出ていることも発見しえた。 第四に、福祉多元主義化の動きは、大きくいえば世界的なグローバリゼーションあるいは国民国家のゆらぎといわれる世界史的動向と密接に関連しているとの認識から、本研究の一環として「グローバリゼーションと国民国家のゆらぎ」(望田、碓井編『グローバリゼーションと市民社会』文理閣、2000年11月刊)という論文を執筆した。
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