経済の成長は、資本(実物及び人的)の蓄積によって国内所得が増加する現象を指す。この過程では、資本は家計によって資産として保有される。従って、家計の資産選択が経済の成長速度に影響を与えることは明らかである。家計が過剰に社債(企業への貸し出し)を保有するならば、これは成長を加速するものの、資本の過剰蓄積が生じ、消費は非効率的な水準に落ち込む。他方、家計の株式(配当請求権)保有比率が高まると、世代間の所得移転が生産過程を介さずに進む、よって、資本の過剰蓄積が回避され、競争的な資産市場が消費を効率的な水準に導くことが示される。同時に、若年世代全体の所得が上に有界であるとき、競争的な資産市場が横断性条件(the transversality condition)を満たし、その結果、均衡株式価格と(現在価値で表示される)配当の総和とが均等する。すなわち、経済のファンダメンタルズが市場均衡を決定する経済成長モデルが存在することになる。 他方、上のモデルにおいて、仮定の幾つかが満たされない場合、資産市場が配当の総和を上回る均衡株式価格を形成する可能性が示される。つまり、資産にバブルが生じる場合である。このケースでは、ファンダメンタルズと市場価格の乖離が、世代間の所得移転を過剰に進め、経済厚生が損なわれる。
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