研究概要 |
経済学者・官僚と政策形成の関わり、および政策経済学としての経済学の有り様を資料にもとづいて実証的に解明する作業を継続し、関連領域の研究者との交流・意見交換も積極的に行って一定の研究成果を発表した。同時に、最終年度であるため、研究成果をとりまとめるように努めた。論文'Alfred Marshall on Britain's Industrial Leadership-With Special Reference to Industrial Organization'では、産業覇権の交替期に生きたマーシャルが、「イギリスの産業上の主導権」という政策課題にどのような処方箋を与えようとしたかを、産業組織論を中心に考察した。ドイツやアメリカを中心に大企業経済が興隆するなかで、マーシャルがイギリスの経験を基礎に考えたindividualityとcooperationを基礎とする産業内組織分業、あるいは地域内組織分業のあり方とその歴史的意義を現代的な観点から明示した。また、Marshall, Ashley on Education of Businessman, and 'Science of Business'?-Marshall's School of Economics in the Makingでは、マーシャルとアシュリーによる経営人材の養成および彼らの企業者・経営者観を比較検討すると同時に、マーシャルが構築しようとしたケンブリッジ経済学の政策経済学としての有り様を解明しようとした。その延長で、マーシャル、ピグーとその時代の貧困、福祉に関する経済思想(創生期の厚生経済学)をまとめようとしている。また、イギリスとの関わりで、日本の場合を検討し、「上田貞次郎の新自由主義日本経済論」、'Ichiro Nakayama and Stabilization of Industrial Relations in the Post-war Japan'を発表した。
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