研究概要 |
本研究は,個人のもつリスク選択行動パターンと,オークション市場による合成結果との直接的な関係を明らかにすることを目的とする。今まで実験経済学の分野では選択行動と市場の実験研究は独立な研究対象であったが,本研究ではその直接的関係を理論的に抽出するのみならず,同じ被験者を使って選択行動と市場との両方の側面を実験することによって,その関係を直接検証しようという新しい試みである。 本年度では,個人の持つ情報が個人間で独立であるという条件の下で,現在まで同値だとされてきた4タイプのオークションにおいて,その価格付けパフォーマンスが異なる結果を生み出す要因が人々のリスク選択行動パターン(Allais型)にある可能性を指摘し,そのパターンを効用関数を使いより一般的且つ実験実績結果と適合するように定式化することを目的とした。現在本研究では,今までAllais型リスク選択行動を特徴づけるとされてきた条件よりも,弱い条件で特定できることが判明し,またより一般的な効用環境にもその性質は拡大できる見通しがついた。 また本年度中訪問したシンガポールにおける資料収集やディスカッションの結果,この目的のためにより適した実験方法の目処をたてることができた。一方その成果を踏まえて選択行動についての予備実験を行い,本研究のベースになるAllais型選択行動の存在を確認することができた。 来年度は理論面の精緻化をはかるとともに,本格的な実験を行う予定である。そのために本年度から実験用プログラム作成の準備を始めている。引き続きこの分野の実験に関する文献と既存研究でのデータの収集や,研究補助要員の確保,更なる実験環境の人的物的整備を進める必要がある。
|