平成12年度は、研究計画にしたがって以下の課題に取り組んだ。(1)新制度学派の開発政策に対する評価の整理・検討、世界経済の構造変動に関する諸議論の検討、(2)現代の制度変革の前提としての、アジア、ラテンアメリカ両地域の発展過程の検討、(3)両地域における経済統合の性格の解明、(4)両地域における地域統合の正確の差異と共通性の探求である。 以上により、今後の研究継続の基盤として獲得した成果は以下のようにまとめられる。第一に、新制度学派による経済開発過程での政府の貢献に関する議論の検討からは、政府が民間部門のコーディネーション能力育成、制度形成を促すやくわりのゆうえきせいを確認する事ができた。日本における企業間関係、メーンバンク制度、韓国におけるコンテストベース補助金政策など、「状態依存型レント」を発生させる政策の有効性である。しかしながら、第二に、現在のグローバリゼーション過程のもとで国内的政策によって「状態依存型レント」を発生させる事、また個別国独自の非市場的民間部門の資源配分システム形成困難になっている。第三に、アジア、ラテンアメリカ両地域のこれまでの経済統合の試みを検討した結果、それらは、グローバリゼーションのもと一国レベルでは困難となりつつある非市場的民間部門の開発志向的資源配分システム形成を促す「状態依存型レント」を発生させる政策としての側面を持つ可能性がある。第一と第二の点については研究発表欄に記した論文としてまとめた。第三の点については、両地域の経済統合過程の異質性と同質性の一層の検討を通じて実証していく事が課題としてなお残されている。この点は次年度における継続研究課題としなければならない。
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