本年度はこれまでの研究成果をもとに、「地域経済統合の経済開発上の効果」に関して、以下のような過程で研究を進めた。 (1)ラテンアメリカ地域とアジア地域との比較研究 (2)経済統合理論の成果の検証 (3)研究成果報告書の作成 以上の検討を通じて、報告書において記したように、垂直的統合(先進国との統合)と水平的統合(途上国間の統合)に関する効果と限界を、ラテンアメリカという地域的コンテキストとアジア地域との比較を踏まえながら示した。すなわち、アジアとメキシコの経験からは、垂直的統合はマクロ経済的にはよりよいパフォーマンスを示しているが、経済化開発過程の対先進国依存関係を深化させてしまう。また国内の調整問題も深刻になる傾向がある。他方、水平的統合は当然途上国間協力としての性格をより強く有している点に特徴があるが、MERCOSURやアジアにおけるAFTAの経験は、その協力が世界経済の変動に対して脆弱であることを示唆している。 以上の研究結果は、対象範囲・期間の現実的限定性などから十分な実証的根拠を与える点では課題を残しているが、途上国間、途上国と先進国間、という二つの類型の経済統合に関して、それぞれの課題と限界を示すことができたと考えている。 今後は、本研究の成果を基礎として、今日の世界経済システムにおける重大な不安定性要因である通貨危機とその「伝染」効果に関して、世界の4つ主要な地域経済統合枠組みの経験について比較研究を行っていきたいと計画している。
|