第1論文 日本は諸外国から、国内市場が非競争的であり、それが外国製品の参入を困難にしている、と批判されてきた。このような批判に関して経済理論的な説明は従来なされてこなかったが、第1論文により経済理論的な説明のできる方法が示された。 一国の下流部門における不完全競争が国際貿易を通じて他の世界に影響する過程を扱うことのできる貿易モデルを構築する。この目的のため、国際的に貿易される財を生産の垂直的連鎖における中間財と見なす。中間財は上流で生産され、下流で最終消費財に転換される。そのモデルを使い、一国の下流部門における競争の抑圧は近隣窮乏化政策として作用すること、すなわちその国自身の効用を上げる一方で貿易相手国の効用を下げることの可能性を示す。 第2論文 実施計画に従い、HOVモデルを用いた貿易の実証分析の文献を展望した。特にその中で重要と思われるTrefler(1995)では、自国財と外国財の間の代替性に関するArmingtonの仮定に注目が置かれている。われわれは、国内で生産されている財が外国から輸入されている財とどの程度代替的かということを考察するうちに、この問題がダンピングと密接な関係にあることを発見した。 多くの場合、ダンピングは国内製品からそれと競争する新しく国内市場に導入された外国製品への大規模な需要シフトを伴う。この論文ではそのような需要シフトをモデル化する新しい方法を提示する。新しい製品の独占的供給者は限界費用よりも低い価格で販売するかもしれないことを示す。この結果は限界費用ダンピングと呼ばれるものに対する新しい説明となる。
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