研究概要 |
新規学卒者の労働市場への参入とマクロ経済の関係を解明するための理論の構築を目指して国際労働移動を仮定した開放マクロ経済を分析し,以下の結果を得た.「2国マクロ経済モデルにおける国際労働移動」(『経営と経済』(長崎大学),1999年12月,79巻3号,pp.33-52)は,国際労働移動を取り入れた2国マクロ経済モデルをつかって労働者がどのような国からどのような国へ移動するかを調べた.本論文のモデルは,それぞれの国の労働市場が非競争的で,労働者は実質消費賃金率(≡名目賃金率/消費者物価指数)の低い国から実質消費賃金率の高い国に移動し,かつ経済構造,組合の目的関数および政策当局の目的関数が2国間で対称的であると仮定した.これらの仮定を含んだ2国マクロ経済モデルから,労働者が組合と政策当局が協調的に行動する国から組合と政策当局が非協調的に行動する国へ移動するという結果を導き出した.このような結果は,2国間で組合や政策当局の最適化問題が非対称的であることから導出された.「輸入関税と国際労働移動」(『経営と経済』(長崎大学),2000年3月,79巻4号に発表予定)は,輸入関税率の変更が国際労働移動におよぼす影響を国際動労移動を取り入れた2国マクロ経済モデルをつかって調べた.労働者は輸入関税率の低い国から輸入関税率の高い国へ移動し,輸入関税率の高い国の雇用量は輸入間税率の低い国の雇用量よりも大きい.失業率は国際労働移動から独立であるが,国際労働移動が可能であるばいの失業率は国際労働移動が不可能であるばいの失業率よりも低い.また国際労働移動が可能であるばいの2国の雇用量の和や2国の国民所得の和は,国際労働移動が不可能であるばいよりも大きい.さらに政策当局が実質消費国民所得(≡名目国民所得/消費者物価指数)を相手国よりも大きくすることを目指すならば,輸入関税率を相手国よりも高くしなければならない.
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