平成11年度に行った研究の内容は以下のとおりである。 第一に、関連研究のサーベイとして、不確実性と家計労働供給の研究および家計内の時間配分に関する研究を整理した。また、景気変動と就業行動に関するマクロ経済からの関連研究についてもサーベイし、研究会を開いて明らかにすべき課題を討議した。景気変動に対する家計労働供給に関しては、家計の不確実性に対する行動をどのようなモデルとして推進するかが課題とされた。また、下記のような労働統計の分析に関しては、需要要因と供給要因とをどのように分解するかが大きな課題として検討された。 第二に、日本の「労働力調査」「毎月勤労統計」などの労働統計を過去30年間にわたって整理し、男女それぞれの労働力の推移、産業別の特徴などを分析した。その結果、例えば男女別産業別の労働投入量(常用労働者×年間実労働時間)の調製を見ると、製造業男子では所定内労働時間と所定外労働時間で調整されているのに対し、製造業女子では常用労働者と所定内労働時間で調製されていることが明らかになった。また、雇用者の要因分解からは、男子では1980年以降サービス業の寄与が大きいこと、女子では男子よりも変動が大きく、不況時に女子雇用者の寄与度が製造業で小さくなり、サービス業で大きくなる、といったことが明らかになった。この研究成果は、荒山裕行・杉浦立明「景気変動と労働市場-労働時間、労働日および賃金に関する男女比較-」(名古屋大学経済学部付属国際経済動態センター『調査と資料』109号)として発表した。
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