「コースの推測」とは、ノーベル経済学賞受賞のコース氏が静学モデルを用いて、「耐久消費財の供給を独占する企業は価格操作をせずに、プライステーカー(価格と限界費用とを等値する競争者)として、その財を生産・供給するだろう」と推測したことである。 本研究の目的は2つ存在する:1つめは、1財の部分均衡モデルに中古品を含む他財の状態方程式を加えるなど「コースの推測」を一般均衡の枠組みの中で再考察することであり;もう1つは、当該企業がわざわざプライステーカーとして繰り返し行動せずにはおれない状況と独占的な価格操作に必ず成功する状況と(つまり、静学モデルにおいては全く両極端な戦略)を統一的に説明可能なゲーム理論的動学モデルを構築することである。 まず、2財以上(の連立状態微分方程式)を取り扱い可能で、異時間の貨幣価値を比較可能な割引率パラメータを有する、汎用的なLQ最適制御モデルを構築した。その際、レイドの手法を用いて、ポントリャーギンの原理より導出された線形常微分方程式体系からベルマンの原理より導出される非線形の行列リカッチ方程式の(初期値に依存しない)解を導くことに成功した。さらに、ハミルトン行列変換を用いて、固有値全体が非負の割引率パラメータの半分だけシフトすることを証明した。リカッチ方程式の解は非対称行列となり、動学モデル体系の特異点の安定性を調べるためには、一般的な行列リャプノフ関数のセカンド法が有用となる。 次に、この非対称な動学解は上記した両極端な静学解の加重平均で表現される。例えば、割引率や減価償却率パラメータ等の凸結合となる。しかし、需要者が価格上昇率を期待するならば、この凸結合は微妙に崩れ始めるので、独占企業が「コースの推測」を避けるためには、耐久性を弱める等の処置も時と場合によっては有効となることが判明した。
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