研究概要 |
1985年以降の国際的産業構造調整での大きな特徴の1つは、直接投資を通ずる技術移転,産業高度化、新たな雇用機会の創出と転換である。もう1つは,それに伴う貿易構造調整と雇用調整である。 これらの点を実証的に分析するために、まず、日米欧と東アジアでの製造業のシェアの変化をGDPと就業者の面で検討し,日米欧から東アジアへの生産基地のシフトを確認した。また、日米経済の相互依存について,1995年の国際的産業連関表を用いて,日本の海外進出企業の活動がアメリカ経済および日本経済に与えた影響に関する分析を行なった。それによって、日系企業の生産は日本の最終需要からの影響は相対的に小さく,米国の最終需要変化からの影響の方が大きいことを明らかにした。ついで、日米欧のアジアへの直接投資が被投資国経済に与えた影響を分析するために、タイ国を取り上げ,マクロ計量モデルを使って,直接投資増加や為替レート調整のインパクトを計測した。さらに、東アジア経済の成長の持続性と国際競争力について分析するために,香港とシンガポールをケースに取り上げ,データ包絡分析(DEA)を使って,Malmquist生産性指数の計測とその要因分析を行い、両国の経済成長のパフォーマンスを評価した。その結果,1990年代の香港では,非効率性が全く見られず生産フロンティアも毎年拡大しているのに対して,シンガポールでは、生産フロティアのシフトは階段状に生じていることが明らかになった。最期に,中国の工業化-石油需要増大に対して,沿海部(東シナ海)での石油開発の基礎的条件について検討した。 1997〜8年のアジア通貨・経済危機が国際的産業構造調整に与える影響については、さらにデータの蓄積が必要である。
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