研究概要 |
本研究の内容は次に3つの部分に分かれる。 (1)アジア環境分析用産業連関表(EDEN Data Base)の作成とその結果分析 (2)日本の環境分析用産業連関表を用いた分析 (3)中国の環境問題に関する分析研究 各項目に関する今年度の研究進捗状況は次の通りである。 (1)1990年のEDEN Data Baseの第一次推計が前年度までに終了したが,今年度はその結果表を用いて対象国(日本,韓国,中国,台湾,ASEAN5ヶ国)のエネルギー消費やCO2,SO2排出状況について比較分析を行った。また対象国間の中間財貿易を通じた相互依存関係を通じて,たとえば日本の最終需要が東アジア諸国にどのようなCO2排出を誘発しているかなどの分析を行った。それらの分析を通じて,第一次推計には修正を加えるべき点がいろいろみられた。そのため,今年度の多くの部分はその修正作業に費やされた。具体的にはIEA,APEC,エネルギー経済研究所などで公表されている各国のエネルギー消費量やCO2排出量の値との比較,投入係数表の詳細なチェックなどを行った。 (2)まず日本の産業連関表を用いて環境家計簿分析を行った。つまり,産業連関のオープンモデルを応用して家計のためのCO2排出点数表を提示し,さらにそれを家計調査の結果に当てはめていろいろな属性を持つ家計の消費から直接間接に誘発されるCO2排出量を推計し,ファクトファインディングを行った。つぎに,家計消費の中でももっともCO2排出と深く関わるのはエネルギー消費であるので,家庭用エネルギー消費の実態について諸統計を調査し特徴を整理した上で,簡単なエネルギー需要関数の計測を行った。しかし,正確な測定のためには家庭用エネルギー機器における技術進歩を考慮する等,残された問題がある。そのほかに,未来に予想される産業構造の変化が環境に与える影響を考察するための第一歩として,情報化の進展と産業構造の変化について若干の考察を行った。 (3)中国の環境問題については,これまでに中国各省別の石炭を中心とするエネルギー消費状況やSO2排出状況に関する分析研究を行ってきた。そこで,今年度からはその状況を改善するための諸方策とはなにか,それを実現するためにはどのくらいの費用がかかりどの程度の効果が得られるかについて研究に取りかかった。また,中国を含む発展途上国の環境改善に貢献するための技術移転を経済的にサポートするために仕組みとして考えられるCDM(Clean Development Mechanism)の国際的動向についてサーベイを行った。
|