本研究は、現在ロシアにおいて進められている基礎研究成果の実用化に向けての努力の内容を調査解析し、とくに日本の立場から、実用化のための課題を明らかにすることを目的とするものである。本年度は2回に渡り、西シベリアのノボシビルスクにおいて現地調査を行い、資料収集とヒアリング調査、各種セミナーへの出席によって以下の成果を得ることができた。 1.ロシア科学アカデミー・シベリア支部が作成した科学研究・試作品設計活動の総覧、ノボシビルスク市政府が発表した投資誘致案件の一覧、この他にロシアの科学技術に関する各種統計・文献、ロシア科学技術統計センターの報告書などを系統的に入手した。 2.日ロ間の技術貿易に関する統計資料やOECDの科学技術統計の分析から、ロシアからの技術移転の現状、特にそのハイテク産業の輸出競争力、さらに近年における国内の科学技術開発体制の動向と問題点が明らかになった。 3.学研都市を抱えるノボシビルスクにおける地域経済と科学技術部門の現状分析から、基幹産業である鉱工業の技術的基盤を担う同部門の再生が地域経済を浮揚させるカギを握っていること、他方で基礎研究の蓄積に乏しい日本にとって、ロシアの研究成果をR&Dのseedsとして活用できる可能性が大きいことを示した。
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