本研究の目的は、アメリカに比して立ち後れの目立っている日本の科学技術研究基盤の育成に向けた取り組みについて、その実態把握とそのあるべき政策の方向性についてのそれを論じること、とりわけ21世紀の経済社会を切り開くであろう情報通信ネットワーク系の技術について論じることにある。具体的には、科学技術データベースから作成された技術連関表に依拠して分析する。当初は科学技術論文のデータベースを中心に分析する予定であったが、研究の過程で特許データベース(WPI)の有効性が高いことが確認されたので、その分析も加えた。分析の結果、日本の科学技術研究基盤がハードウェアに偏りソフトウェア分野が脆弱であること、基礎研究への人的資金的投資の不足が目立つことことを始め、多くの興味深い事実が分かった。また、あるべき方向性についても、ソフトウェア分野の例をあげれば、従来の人工知能のような研究ではなくエージェントソフトウェアのような新しい知的なソフトウェアの開発が必要であることなど、現在の技術進歩のトレンドを確認できたたたもに、このようなシフトに関して日本がアメリカよりも大きく遅れていることも理解できた。分析の結果は、2つの著作として刊行された。次年度は、これを踏まえてさらに日本のあるべき科学技術研究基盤の育成の方向性について研究を深める予定である。
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