知的財産権とイノベーションについて以下の四つの分野で研究を進めた。第一は、知的財産権のライセンスについて、市場競争が継続実施料制と定額制に与える影響について分析を行い、論文をまとめた("Fees versusroyalties in technology licensing when competition exists")。本論文は学術専門雑誌に現在投稿中である。第二に、ライセンスについて実証的な分析を行うために、日本企業のライセンス活動について統計及び有価証券報告書の記載データからのデータベースを構築し、分析を開始している。第三は、知的財産権の役割についての制度的な研究であり、世界知的財産権機関(World Intellectual Property Organization)の要請で民営化に関する諮問委員会のメンバーとなり、民営化過程における知的財産権の役割について研究をした。その過程でNTTの経験についての調査も行った。研究成果は、世界知的財産権機関から近刊される報告書(Final Report of the ad hoc Advisory Panel on Privatization)に反映されるとともに、その付録に掲載される予定である。第四に、知的財産権が各産業のイノベーションに果たす役割を検討するために、ソフトウエア、エレクトロニクス、医薬品などの分野において、産業界及び特許庁の実務家を招いた研究会を行うとともに、その成果にもよりながら、二つの論文(「知的財産権とイノベーション」、「プロパテント政策と知的財産権戦略」)を執筆し、それぞれ本と雑誌に掲載予定(済み)である。
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