イノベーションを強化するための日本の知的財産権制度(特許制度を中心に)の今後のあり方について理論的かつ実証的に研究することを目的として、研究をしてきており、本年度は以下の二つの研究を行った。最初は知的財産権の強さとイノベーションの関係についての研究であり、日本におけるライセンス契約の動向の実証的な分析を行った。これによると研究開発集約度、排他権・商標などの要因変化をコントロールしても、知的財産制度が強化された1995年以降、日本市場でのライセンス料金は有意に、しかも研究開発集約型の産業でより大きく上昇したことを見出した。第二は、技術標準の革新のためのパテント・プールについての研究、知的財産保護における損害賠償制度および権利設定のあり方についての研究を行った。最初の研究から、(1)どのような条件において技術標準の革新のために企業間競争ではなく企業間協力が必要になるのか、(2)アウトサイダー企業の登場など企業間協力が円滑に進まないことがある原因は何か、その解決策は何か、(3)パテント・プールが技術標準の更なる革新への企業間競争を阻害しないためにはどのような条件が必要なのかを、理論と実際のパテント・プールの事例によりながら明らかにした。また、知的財産制度とイノベーションについてのワークショップを一橋大学で平成14年の3月15日と16日に行った。国内の研究者約30名の参加を得て、13本の研究報告がなされ、最初の研究はこのワークショップで発表した。
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