3年間にわたって行った本研究においては、まず第1に、旧ソ連・東欧諸国への資本の流入状況に関して、各国統計や国際金融機関の資料を収集し、また外国人専門家からの聞き取り調査を行って、特に外国直接投資の点ではハンガリーが、ポートフォリオ投資に関してはロシアが詳細な検討に値することを明らかにした。そこで第2に、両国の問題状況に焦点を当てて、詳しい分析を行った。その成果は、既に3本の論文として発表されているだけでなく、私が日本側責任者として関与しているブルガリア経済省に対する政府間技術協力プロジェクト「重要施策中枢支援(産業政策)」においても大変参考になった。 というのは、第3に、ポートフォリオ投資だけでなくFDIも、ポジティヴな面だけでなく、重大な否定的側面のあることが明らかになったからである。すなわち、ハンガリーにおけるFDIの国際収支、外国貿易、経済構造に対する影響の分析を通じて、FDIの大量流入の結果、ハンガリー経済は、外資系企業セクターとハンガリー人企業セクターへの分裂という深刻な二重構造の問題を抱えることになった点が解明されたのである。外資導入に成功したハンガリーが、市場経済化の観点からは優等生であるにもかかわらず、自立した国民経済の確立という観点から見ると、深刻なほどに外資依存を強めたことは、外資導入が市場経済化のための万能薬ではなく、その注意深い選択的導入の必要なことを示している。最後に、ロシアについては、慢性的で重症の「オランダ病」を抱えるロシア経済において、安易な経済自由化の持つ危険を指摘することが出来た。
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