公的部門の組合組織率の上昇と民間部門の組合組織率の下落現象が、組合の発言効果の部門間格差で説明されるかを探究するために、部門ダミー変数(公的部門を示すダミー変数×組合ダミー×シェア・ダミー)をCurrent Population Survey(CPS)から新たに構築し、これを説明変数に加え、離職の競合リスク・モデルを男女ごとにセミ・パラメトリック最大尤度法により再推定してみた。しかし、統計的に有意な部門間格差は、見出されなかった。 また、組合の発言効果に男女間だけでなく、男女×人種、男女×年齢グループ、男女×人種×年齢グループ間でも格差があるか否かを探究するために、産業×職業の組合員の各セルの中で各グループが過半数を占めることを示すシェア・ダミーをCPSから新たに構築してみた。しかし、各セルを上記のグループ別に分けたサブ・サンプルのサイズが予想以上に小さく、信頼性の高いシェア・ダミーを構築することさえできなかった。 このシェア・ダミーの信頼性の問題は、昨年度行った組合の発言効果の男女差の推定にも該当すると判断し、CPSの産業×職業の組合員の各セルのサンプル・サイズが500未満である場合には、シェア・ダミーを欠損値として扱い、男女ごとに離職の競合リスク・モデルを再推定してみた。その結果、昨年度の結果とは異なり、(1)組合の発言効果があるのは、男女共に、労働者のジェンダー・グループが組合構成員の過半数である場合に限られること、また、(2)女性が組合員の過半数を占める場合の方が、男性が組合員の半数を占める場合よりも組合の発言効果が強いことが新たに判明した。 最後に、米国から招聘した研究者による研究成果の詳細なレビュー、論文執筆指導、今後の研究の展開についてのアドバイスを受けることができた。
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