平成11年度は、主に、3つのことについて、成果をあげた。まず第一は、日本の自動車産業組織に関する文献の批判的検討を行ったことである。日本の自動車産業組織に関しては、世界的に有名な研究が日本において蓄積されてきた。浅沼万里教授の研究は有名であるが、最近、若手の研究者の間でも、日本の自動車研究が盛んに行われるようになった。系列を中心とした特に日本独特の取り引き形態は、一見、閉鎖的に見えるが、経済的にきわめて合理的な側面が存在していることがあきらかとなった。ただし、自動車産業では、経済のグローバル化が進展中であり、従来の日本型モデルをそのまま途上国に適用することは不可能であることもあきらかとなった。日本型取り引き形態のどのような部分を残し、どのような部分を変更して他国に適用可能かについてはさらに今後検討をしていく必要性がある。 第二は、日本の自動車組み立て、車体、ならびに自動車部品産業の事業所別データを入手し、その整理をおこなった。本研究の最大の特徴は、これまで、理論的または特定のケーススタディーに偏っていた自動車産業のパーフォーマンスの実証分析をミクロデータを用いて行うことである。そのデータベース化を完了した。平成12年度は、計算作業を続行する予定である。 第三は、ASEAN並びに台湾の自動車産業のデータを整理した。ASEANは特にマレーシアとインドネシアを中心として、データベース化を進めた。 平成12年度は、日本とASEANや台湾の自動車産業のパーフォーマンスを実証比較分析した上で、その類似点、その相違点を明らかにし、後者のパーフォーマンスの改善のために何をなすべきか、特に、どのような自動車取り引きモデルがそれぞれの途上国に最適であるか、また、どのような政府の政策が必要であるかを明らかにする予定である。
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