今年度は、引き続き、まず、日本の自動車産業の研究を行った。特に、今年は、日本の自動車産業の国際競争力の源泉であり、日本に独特とされる取引システムを具体的に指標化し、それがどのように、生産性等のパーフォーマンスに影響を与えているか、検証した。次に、ASEAN、特に、インドネシアとマレーシアの自動車産業の状況を、部品産業の発展具合と日本の直接投資の影響に焦点をあてて、引き続き、研究を行った。台湾については、全産業について、直接投資の影響を探った。その結果、次のようなことがわかった。 1.特に日本の自動車産業に特徴的であるとされる、緊密的で協調的な企業間関係は、必ずしも一定ではなく、時間とともに変化することがわかった。また、緊密な企業間関係も、常に、正の影響を与えるとは限らないことも明らかとなった。したがって、日本の部品産業の発展の経験から学ぶことは多い反面、その移転に関しては、その国の状況を考慮する必要が多いにあることがわかった。 2.一方、ASEAN、特に、マレーシアとインドネシアでは、部品産業が依然、非常に未発達な状況であることがわかった。その理由は、マレーシアでは、自動車産業においては、外資系企業を極力排除し、部品産業も強力に保護したため、そのレベルが低位にとどまってしまったことにある。一方、インドネシアでは、外資系の部品会社は良好であるが、地場系の部品産業がきわめて未発達であるためである。ただし、未発達ながらも、マレーシアとインドネシアの事例を比較すると、自動車産業の発展には、外資系企業の役割が大きく、企業間の緊密的で協調関係を重んじる日本型発展モデルはある程度、有効であろうと考えられる。
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